目次
はじめに
CAN-SLIM投資においては7つの上昇銘柄を見つけるルールがあり、それぞれの頭文字をとって「CAN-SLIM」という名前をつけています。
その中で最後の項目であるM(株式市場の方向)は他の6つ全ての条件が揃ったとしてもこの条件が満たされていなければ投資してはいけないと言われるほど重要な項目です。
Mの項目は他の項目に比べても内容が多岐に渡っており、一つの記事にまとめるのは難しかったのでテーマに分けて記事にすることにしました。
今回は市場が転換するポイント「相場の底」を見極める方法です。市場の底を見極めることができれば、非常に効率的に利益を増やすことができます。
「上昇への試し」の動きを捉える
市場が底を打つときには何回かの上昇に向けた動きが見えます。しかし、本格的に底を打って上昇するためには、必ず明確なサインがあるとオニールはいいます。まずはその最初のきっかけとなる「上昇への試し」を見つけることから始まります。
株価の調整時期では、その規模にかかわらず、必ずある時点でマーケットが上昇を試すものである。そのときに焦ってその波に飛び乗ると痛い目に遭う。マーケットが新たな上昇トレンドに入ったことを確認できるまでは、じっと待つことだ。高値への試しは、主要な平均株価が下落のあとに上昇して引けると始まる。
ウィリアム・J・オニール 「オニールの成長株発掘法第4版」より
この上昇への試しの動きですが、以下のような事象が当てはまり、この事象が発生した日を「一日目」と数えます。
■前場に急落した後、後場に回復して高値で引けたとき
■前日に下落して引けたが、翌日下落を回復したとき
■下落して引けたが、終値がその日の値幅の半分より上で引けたとき
言葉だけではわかりづらいのでローソク足で例を挙げてみました。
前提となるのは、一日目以降の安値(青の点線)より下に株価が下がらないことです。下がったら再びリセットされます。
その1 前場に急落した後、後場に回復して高値で引けたとき
これはわかりやすいですね。ローソク足が陽線(白)で上ヒゲが出現せず、下ヒゲが長い形になります。
その2 前日に下落して引けたが、翌日下落を回復したとき
このパターンのポイントは前日の始値と同じ水準に一日目の終値が戻ること(赤の点線)です。ローソク足の形としては様々あると思います。
その3 下落して引けたが、終値がその日の値幅の半分より上で引けたとき
このパターンのポイントは陰線(黒)になるものの、下ヒゲの長さがその日の値幅の半分よりも長いことです。
上昇への試しの一日目の動きが出て次の日から市場が反転したとしても、ここで上昇へ転換したと判断するのはまだ早く、「だまし上げ」の可能性があります。
しっかりと上昇転換へのサインを待ちましょう。
腰を据えて、じっと我慢して待つのだ。株価が回復を始めて最初の数日では、その試しが成功するかどうかはまだ分からない。
ウィリアム・J・オニール 「オニールの成長株発掘法第4版」より
上昇の試しが始まったあとの上昇転換のサイン
試しの上昇が始まって四日目以降は、いずれかの主要な平均株価が前日よりも出来高を大幅に増やして上昇し続けるかどうかを観察する。これが起これば、その上昇が本物になる可能性が一層高くなる。
ウィリアム・J・オニール 「オニールの成長株発掘法第4版」より
最も強力な上昇は、上昇を初めてから4~7日目、長くても10日以内に起こると述べています。「オニールの相場師養成講座」の中でこの現象に対して「フォロースルー」という名前をオニールは付けています。フォロースルーの時の上昇は強く勢いがあり、大きな爆発力を持って上昇します。
フォロースルー
上昇の試しから4~10日以内に前日の出来高と一日の平均出来高よりも出来高が増加し、前日より1.7%以上株価が上昇すること
まれに、上昇の試しが始まってからわずか3日目にフォロースルーの現象が起きることがあるが、その場合は1~3日目のすべてが出来高増加と1.5%~2%の上昇を伴っている必要がある
フォロースルーの動きをローソク足で表現すると以下のようになります。
図で表現しきれていませんが、出来高の上昇は平均出来高より上であることとしています。だいたい30日くらいの平均出来高を私は参考にしています。
フォロースルーがでれば市場が上昇に転換したことを知らせる合図です。ただし、「オニールの相場師養成講座」の中で、フォロースルー日の確率は80%であり、残りの20%では出来高増の指数終値安という状態で数日間で挫折してしまう。と述べています。
すぐに「ディストリビューション」や「ストーリング」などの下落を示すサインが出る「だまし上げ」で終わってしまう可能性もあるのです。
こうした相場の天井を示すサインに関しては以下の記事を参考にしてください。
80%という確率は充分高いと思いますが、確実な上昇トレンドへの転換はフォロースルーの動きとともに次の章で上げる「第2のサイン」を確認することが大事です。
上昇相場を決定づける第2のサイン
この上昇へのサインは、急いで好き勝手に買うべきだということを意味しているわけではない。単に、素晴らしい売上と収益率を持つ高品質な銘柄が、しっかりとしたベースから抜け出たら買い始めても良いという許可にすぎない。これは上昇が成功していることを知らせる2番目の重要なサインである。
ウィリアム・J・オニール 「オニールの成長株発掘法第4版」より
ここでいう「高品質な銘柄」は当然CAN-SLIMに当てはまり、業界を引っ張るリーダー(シェアが高いという意味ではなく、成長を牽引している)である銘柄です。こうした銘柄が取っ手付きベースなどを形成し、上昇前の振い落し期間を経て、ピボットポイントをブレイクするタイミングと一致しているということが本格的な上昇相場への転換を意味するとしています。
取っ手付きベース形成についての詳しい内容は以下の記事をご覧ください。
AS Wind流投資手法 株を買うタイミング その1・基本のチャート形状「取っ手付きカップ」
忘れないでほしいのは、どんな新しい強気相場も強い株価と出来高の増加が証明されないまま始まったことはないということである。忍耐強く待ち続け市場に耳を傾けておいて損はない。
ウィリアム・J・オニール 「オニールの成長株発掘法第4版」より
一日や二日の市場の大幅上昇で乗り遅れまいと浮足立って相場に参戦すると、「だまし上げ」や「出遅れ株の上昇」に巻き込まれて再び下落の流れに戻してしまうことがあります。
「上昇の試し」を見逃さず、フォロースルーの動きを確認したあとに、適切なベースを形成した銘柄のブレイクを待つ。
これがCAN-SLIM投資法における底の反転を捉えるポイントになります。
強気相場の最初の2年が儲けどき
大金を儲ける絶好のチャンスは、だいたい新しい強気相場が始まってから最初の1~2年に訪れる。このときに現れる市場のサインを見逃さずに、できるだけ多くの利益を得る必要がある。
ウィリアム・J・オニール 「オニールの成長株発掘法第4版」より
相場は常に上下を繰り返しています。さらに大きな視点で見ると「上昇トレンド」と「下降トレンド」があります。大なり小なり波があれど、新しい相場サイクルに入ると1~2年は中程度の下落(8%~15%程)が数回起こりながら上昇を繰り返します。このような動きを2年程繰り返したあと、平均株価が伸び悩んでいるのに出来高が増える日が現れるようになってきます。こうなると、次の弱気相場の始まりが暗示されたと考えます。
最後に
強気相場では通常、株価の下落が3回起こるものだが、だからといってそれが4回や5回は起こらないという保証はない。国内の状況や出来事を客観的に評価し、平均株価がだすサインを見逃さないことだ。そして出されたサインの意味を解釈するのがあなたの仕事なのである。
ウィリアム・J・オニール 「オニールの成長株発掘法第4版」より
他の記事でも書いていることの繰り返しになりますが、オニールが言いたいことは常識や周りの意見に頼らず、常に目の前にある事実(株価と出来高)に目を光らせ、分析に基づいた独自の判断を下していくことが重要なのだということです。
今回ご紹介した市場の底を見極める方法を習得し、コツコツと日々市場分析する中で的確に見つけ出して投資に活かすことで、大きな利益を得る機会を得られるはずです。
市場の方向性に関する記事は以下も参考にしてみて下さい。
このブログの元となっている本について
このブログで取り組んでいる市場分析について、詳しく勉強したい方は以下の本を参考にしてみてください。根気よく取り組んでいけば、市場の流れを見極める力が絶対上がると思います。
それ以外にも買いのタイミング、売りのタイミングなど株式投資に必須の知識が網羅されています。この本を完璧にマスターすれば、あなたも投資で必ず成功できると思います。
さらにCAN-SLIM投資を極めたい方はこちらの本でみっちり勉強してみてください。投資で成功するためのエッセンスが詰まっている良書です。