目次
はじめに
CAN-SLIM投資においては7つの上昇銘柄を見つけるルールがあり、それぞれの頭文字をとって「CAN-SLIM」という名前をつけています。
その中で最後の項目であるM(株式市場の方向)は他の6つ全ての条件が揃ったとしてもこの条件が満たされていなければ投資してはいけないと言われるほど重要な項目です。
Mの項目は他の項目に比べても内容が多岐に渡っており、一つの記事にまとめるのは難しかったのでテーマに分けて記事にすることにしました。
Mの項目の数あるテーマの中でも特に重要だと思われるのが、この「天井を見極める方法」です。
この記事ではCAN-SLIM投資法で天井を見極める方法と私が実際に分析した事例について述べていきます。
ルールはいたってシンプル
オニールが過去の天井局面での株価指数の動きを大量に分析した結果、株式の大量売りの兆候を示す幾つかのサインを発見しています。
「オニールの成長株発掘法第4版」の中では語られていませんが、もう一つの著書である「オニールの相場師養成講座」の中でそれぞれのサインに独特の名前をつけて呼んでいます。
ストーリング
マーケット全体の出来高が前日よりも増加したのに株価は前日とほぼ変わらない状態
ディストリビューション
マーケット全体の株価が前日よりも出来高を増加しながら下落した状態
それぞれのローソク足と出来高のイメージは以下の通りです。あくまでも一例ですので、条件(青文字で記載)を満たすことが重要です。
オニールはこれらを「株価の上昇を伴わない出来高の増加」と呼んでいます。
これは、機関投資家による株式の売り抜けの状態を明確に示すものであるとしています。
こういった大口投資家による売り抜けの動きが、次の暴落のきっかけとなっていくのです。
次に売り抜けの動きがどのくらいの頻度で発生したら市場は下落するのかについてです。
天井を打つ直前での大量売りは、通常なら4~5週間に3~5日起こる。つまり売り抜けは、市場がまだ上昇中に起こるのだ!これこそが、売り抜けを見極められる投資家が極端に少ない理由の一つである。4週間~5週間で明確な売り抜けが4~5日あると、その後の市場全体はほぼ必ず下落を始める。
ウィリアム・J・オニール 「オニールの成長株発掘法第4版」より
このセンテンスは重要です。「売り抜け」は上昇中に起きるんです。市場が上昇しているからと言って流れに任せてポジションを積み上げると後で手痛いしっぺ返しを喰らうカラクリはここにあるんですね。
この4~5週間で3~5日というのは目安です。場合によっては2~3週間という短期で発生することもあるし、市場が新高値を試して戻し、売り抜けが6週間以上に長引くこともあると言っています。
いずれにしても「ストーリング」や「ディストリビューション」のサインが出たら、その後の株価指数の動きには注意が必要です。連続でサインが発生するときは大量の売り抜けが発生していると考え、保有する銘柄の売却を考える必要がでてきます。
市場の環境が急変する可能性もあるため、見逃してしまうとマーケットの方向性を見誤ってしまいます。常にマーケットの観察を続けることが重要です。
この売り抜けを示す動きですが、主要な株価指数の一つで確認できれば十分としています。ある指数で前日の出来高より増加したのに株価が0.2%以上下げれば「売り抜け日」とカウントします。
オニールの天井を見抜くルールはたったこれだけです!
われわれが考案したこの単純で強力なルールに従った多くの投資家が、2000年にハイテク主導株が壊滅的な下落をしたときや2008年にサブプライムローン問題が引き起こした弱気相場で命拾いをしているのだ。
ウィリアム・J・オニール 「オニールの成長株発掘法第4版」より
「だまし上げ」を暗示する三つのサイン
マーケットが天井を付けたあとは、だいたい株価は弱々しく上昇をしたあとに下落に転じる。(中略)最初の上昇の試しに失敗したときは、手持ち株をさらに売ったほうがよいだろう。
ウィリアム・J・オニール 「オニールの成長株発掘法第4版」より
投資家がなかなか天井を判断できないことのひとつにこの「だまし上げ」というのがあると思います。一度天井をつけたかなと思うとさらに上昇してしまい、「しまった。。」となってしまうやつですね。ところが次の天井を付けたところで大きな下落がきてしまい、また上昇するかも。。と思っている間にドンドン下がっていくという結果になります。
オニールはこの「だまし上げ」を暗示する3つのサインがあると言っています。
1.株価が天井から最初に下落したあと、数日間上昇するのに出来高は前日よりも下がっている
2.株価指数の上げ幅が前日よりも少なくなっている
3.株価指数が前につけた高値から直近の安値の値幅の半分も回復していない
こんな状況から株価が下落に転じたら手持ちの株をさらに売ったほうがいいと言っています。
次のページは「主導株から市場の天井を見極める」です。