「CAN-SLIM」は「オニールの成長株発掘法」(パンローリング)で詳細に述べられている銘柄選択のポイントになるキーワードの頭文字を集めたものです。今回は5番目の要素「L」についての概要と実際の投資における活用方法について説明します。
LはLeader or Laggardです。Leaderはよくわかりますね。リーダーと日本語で書いても意味が通ります。Laggardは耳慣れない言葉ですね。辞書を見るとノロマ、グズなどまぁ酷い意味の言葉です。今回はorと書いてますが、どちらを選ぶ?というよりもあなたの選定した銘柄が業界をリードする主要な銘柄なのか、それともドングリの背比べみたいな、主役以外のその他大勢的な位置付けの銘柄なのかを問うています。実際に大化けする銘柄はリーダー銘柄であるとオニールは述べており、それを選別する方法についてこの章では述べています。
目次
狙いを主導株に絞り込む
業界内で最高の業績を記録している銘柄を正しいタイミングで買えば、大きな株価の上昇が期待できる。たが、値動きの少ない銘柄や、ましてや株価が下落して割安だから安全だと思うような銘柄は、実はあまり見込みのない銘柄である。
ウィリアム・J・オニール 「オニールの成長株発掘法第4版」より
まず初めに触れるのは原則論です。
オニールは狙うべきは業界を引っ張る「主導株」であって、主導株に引っ張られて動く「共振株」や割安ではあるが万年底値を這いつくばる「停滞株」には手を出さないようにと述べています。
ここでは、そういった「主導株」を大化けするまで保有し続け、「共振株」や「停滞株」と分かった銘柄については早々に手放すように勧めています。
資産を株式で持つ投資家は、業績が最低の銘柄をまず先に売り、業績が最高の銘柄をより長く保有し続けることを学ぶ必要がある。つまり、誤った判断をしたと実証された銘柄は損失が少なくてすむうちに必ず売り、より良い選択をしたと実証された銘柄はそれが大化け銘柄へと発展していくのかを見定めるのだ。
ウィリアム・J・オニール 「オニールの成長株発掘法第4版」より
いきなり話は逸れますが、「オニールの成長株発掘法(日本語訳)」を読んでいると時々言葉の解釈に非常に悩む場面に遭遇します。これが原典の問題なのか翻訳の問題なのかは定かではありませんが、私は残念ながら英語が大の苦手なので原典を読んでも恐らく理解できるころにはこの世には存在していないかもしれませんね。(-_-;)
ここでは「業績」という言葉が出てきますが、いわゆるファンダメンタル的な「業績」を言っているのではなく、「株価のパフォーマンス」を表す意味として捉えないと意味が通らなくなってきます。ので、ここでは業績=「株価のパフォーマンス」と解釈して進めていきます。
単に私の知識不足、浅慮であればご容赦願います。<(_ _)>
その業界における上位1~3銘柄は、残りの企業がまったく振るわないときでも、信じられないような成長をみせることがある。(中略)あなたが探しているのは真に最高の企業だ-つまり、業界全体を牽引し、その専門分野でトップを走る銘柄である。(中略)上位企業とは、規模が最大であるとか、だれもがしっているブランドという意味ではない。最高の四半期EPS増加率および年間EPSの増加を示し、ROEも最大で、利益率や売上増加率もずば抜けていて、株価の動きも活発な企業のことである。さらに、独創性のある優れた製品やサービスを生み出しては、革新的になりきれない古株の競合他社からマーケットシェアを奪い取っていることも特徴である。
ウィリアム・J・オニール 「オニールの成長株発掘法第4版」より
ここで触れている上位企業の条件は、既にご覧いただいた方にはわかると思いますが、「CAN」で取り扱った条件に合致している銘柄ということですね。そういった最高の条件を満たした銘柄こそ、主導株としての値動きをするということなんだと思います。
次の章では、大化け銘柄の必須条件である主導株を見分ける方法について述べていきます。
主導銘柄と停滞銘柄を見分ける方法
最高の値動きを記録した銘柄について、大きく株価が上昇する前のレラティブストレングス指数を調べてみると、平均が87であることが分かった。これは、大化け銘柄がいよいよ最大の上昇を始めようとしているときには、市場の残りの銘柄よりも、値動きはすでに上回っていることを意味しているのだ。
ウィリアム・J・オニール 「オニールの成長株発掘法第4版」より
ここでは「レラティブストレングス指数」という言葉がでてきます。
「レラティブストレングス指数」を直訳すれば「相対的な強さ」となります。「レラティブストレングス指数」はある銘柄の値動きと市場全体の銘柄の値動きを1年間(52週)比較して1~99の評価をつけたものです。例えば「レラティブストレングス指数」が90というのは市場の残りの銘柄90%よりも値動きが良いということを意味します。
つまり、「主導株」の中でもこれから大きく上昇するものは、他の銘柄よりも既に良い動きをしているものであるということです。
この「レラティブストレングス指数」なんですが、オニールが創業した「インベスターズ・ビジネス・デイリー」紙が独自に開発した評価法です。「インベスターズ・ビジネス・デイリー」紙は残念ながら日本市場はカバーしていないので、日本の銘柄の「レラティブストレングス指数」を知ることはできないんです。。
主導銘柄だけを狙って銘柄選択の質を向上させようと考えているならば、レラティブストレングス指数が80以上の企業だけを買うようにするのも一つの手である。(中略)私自身、レラティブストレングス指数が80以下の株は買わないようにしている。実際に大きな利益をもたらす銘柄は、だいたい株価が一回目や二回目のベースから上にブレイクアウトするとき、そのレラティブストレングス指数は90以上になっている。
ウィリアム・J・オニール 「オニールの成長株発掘法第4版」より
非常に明確な選定基準が提示されているにも関わらず、このレラティブストレングス指数が算出できないというのは正直致命的ですよね。。
そのため、これの代替手法を考える必要があります。
今のところの私の考え方としては、直近52週(年間)での株価上昇率をみることが最もシンプルではあるがわかりやすい基準だと思っています。日本市場においては約3,000銘柄ある訳ですが、レラティブストレングス指数80以上をターゲットとするならば、およそ上昇率上位600位に銘柄は絞られてくるということです。
さらに銘柄選択の上では直近での上昇率が鈍ってきていないかを見ていく必要がありますね。チャート的には右肩上がりもしくは最低でも直線であることが最低条件です。
まずは以上を「レラティブストレングス指数」に代わる手法として検証していこうと思います。
真の主導銘柄を見つけて買い、低迷株や共振株は避けること。レラティブストレングス指数が40~60台の銘柄は買ってはならない。
ウィリアム・J・オニール 「オニールの成長株発掘法第4版」より
主導株であること=レラティブストレングス指数が高いことです。分かりやすい基準でありますので、この点は外すことのないように肝に銘じていきましょう。
共振株には手を出さない
共振株とは、主導銘柄のおこぼれをもらうために買われる同じ業界内の別の銘柄のことである。だがそのような企業の利益は、主導銘柄のそれと比較するとたいてい見劣りする。株価は主導銘柄に「共振」して上昇しようとするが、主導銘柄ほどの成功を収めることはけっしてない。
ウィリアム・J・オニール 「オニールの成長株発掘法第4版」より
市場を見ているとよく「出遅れ株」という存在に出会います。市場で話題になっているテーマに沿った銘柄であるのに、まだ株価が上昇しておらずお得ですよ。という存在ですね。オニールはこれを主導株に連動して動く「共振株」と定義しています。
出遅れ株が出る頃には主導株は相当値上がりしており、さらにヒートアップしているはずです。そんな銘柄は伸び代が限られてるから、まだ注目されていない銘柄を狙おう。という投資家の魂胆ですね。
ところがこういう銘柄は主導株ほどの上昇は見込めないとオニールは述べています。
大化けするためには株式市場で結果を残しており、これからも最高のパフォーマンスを見せる銘柄に限って選定していくという事ですね。
どうも普段からスーパーの安売りに慣れている庶民にとっては、「割安」や「残り物」に目がいっちゃいます。そこがなかなか成功しない理由なのかもしれません。
マーケットの調整局面で新たな主導銘柄を探す
市場全体が調整局面を迎えたり下落を始める時というのは、実は新しい主導銘柄を見つけやすい時期なのである。
ウィリアム・J・オニール 「オニールの成長株発掘法第4版」より
投資をしているとどうしても投資している銘柄だけの動きに目が行ってしまいますが、市場全体の動きと銘柄の動きを比較することで主導銘柄を見つけ出すことができるとオニールは述べています。
特に、下落局面においてこそ主導銘柄は特徴的な動きをするのです。
株価が下落したと嘆いている場合ではなく、こういう時こそ市場と銘柄の動きを注意深く観察することが重要ですね。
魅力的な成長株は、市場平均株価の1.5~2.5倍の調整が入る。つまり、市場全体が10%下落したら、優秀な成長株の下落率は15~25%になるということだ。しかし強気相場、つまり上昇トレンドで起こる一時的な調整の場合には、最も下落率が少なかった成長株が最高の選択であると考えてよい。反対に、最も下落率が大きかったものが最悪の選択となる。
ウィリアム・J・オニール 「オニールの成長株発掘法第4版」より
こちらについては考え方を図にしてみました。
市場がオレンジの線のように上昇トレンドの調整局面を迎えた時、市場が10%の下落調整を行った場合に市場よりも大きく調整しつつも、1.5倍~2.5倍の下落幅の中で最も小さなものが、より主導株としての振る舞いに近いということです。
上の図はあくまでも理想的なチャートを表現していますが、調整が大きければ大きいほど、上昇するためのパワー(出来高)が必要となります。調整後に上昇を続けるには燃費の良いほうが加速がつきやすいということですね。
市場全体の下落が最終局面を迎えたあとに、最初に新高値を付けるまでに回復した銘柄が正真正銘の先導株である。このような株価のブレイクアウトが約13週ほどにわたって次々と続くのだ。一級品の銘柄は、だいたい最初の3~4週の間に抜け出てくるだろう。これが理想的な株の買い時期なので、絶対に見過ごさないように。
ウィリアム・J・オニール 「オニールの成長株発掘法第4版」より」
上記二つの引用については実際の事例を見てもらったほうがわかりやすいでしょう。
以下は、今年(2020年)起きたコロナショック前後での主導株(3694オプティム)と日経平均の52週間(一年)の値動きを比較したものです。
市場が停滞する中で大きく上昇したオプティムはコロナショックに先行して下落を開始しています。最終的には市場平均の1.7倍近くの下落調整となり、市場がまだ下降する中で先行して上昇を開始しています。
この事例の中では市場に先行して上昇を開始した「最初の抜け出し」のシーンで投資することが理想ですね。その後は新高値へのブレイクを果たし、13週間に渡る上昇相場を演じています。まさにオニールの述べたままの展開がこの事例ではみられます。
このように市場の停滞局面もしくは調整局面を迎えた時、直近においてレラティブストレングス指数(相対的強さ)の高い銘柄=株価上昇率の高い銘柄の動きを注視していくことは、主導銘柄を選別する良い機会になり得るということです。
市場と銘柄を冷静に分析することで、まさにピンチをチャンスに変えることのできる千載一遇の好機といえますね。
絶対に見過ごすなといったオニールですが、上記銘柄について、私は見過ごしてしまいました。(-_-;)
まとめ
まとめですが、五つ目の要素Lのポイント
1.保有銘柄は「主導株」に絞り込み、「共振株」や「停滞株」は早々に手放すこと
2.「主導株」は上昇前において他の銘柄よりも良い動きを見せる
3.直近52週(年間)での株価上昇率が上位20%の銘柄が主導株といえる
4.株価上昇率が上位でもチャートは右肩上がりもしくは最低でも直線であること
5.主導株であること=レラティブストレングス指数が高いことである
6.調整時の市場全体の動きと銘柄の動きを比較することで主導銘柄を見つけ出すことができる
7.市場全体の1.5倍~2.5倍の下落幅の中で最も小さなものがより主導株に近い
以上となります。最後にオニールの言葉で締めたいと思います。
ただ気に入っているからという理由で株を買ったりしてはならない。きちんと調べてその銘柄にまつわる状況を理解し、ほかよりも株価が上昇している銘柄にはどんな秘密があるのかを探るのだ。一度腰を据えて取り組んでみれば、あなたにもできることである。
ウィリアム・J・オニール 「オニールの成長株発掘法第4版」より
他の要素は以下よりご覧ください。
1.「CAN-SLIM」のC(Current Quarterly Earnings) -直近四半期利益-
2.「CAN-SLIM」のA(Annual Earnings Increases) -年間利益の増加-
3.「CAN-SLIM」のN(New Products,New Management,New Highs) -新製品、新経営者、新高値-
4.「CAN-SLIM」のS(Supply and Demand) -株式の需要と供給-
5.「CAN-SLIM」のL(Leader or Laggard) -主導株か停滞株か-
6.「CAN-SLIM」のI(Institutional Sponsorship) -機関投資家による保有-
7.「CAN-SLIM」のM(Market Direction) -株式市場の方向-