CAN-SLIM投資法

「CAN-SLIM」のC(Current Quarterly Earnings) -直近四半期利益-

投稿日:2019年2月28日 更新日:

「CAN-SLIM」は「オニールの成長株発掘法」(パンローリング)で詳細に述べられている銘柄選択のポイントになるキーワードの頭文字を集めたものです。今回は最初の「C」についての概要と実際の投資における活用方法について説明します。

CはCurrent Quarterly Earningsを略しています。直訳すると直近の四半期利益という事でしょうか。Cの要素については、数ある銘柄の中から最高の成長率を示しているものを選択する極意が書かれており、スクリーニングするうえでも明確な数字が示されているので極めて分かりやすい項目でもあります。しかし、単純に数字だけ拾っていると思わぬ盲点に引っかかる可能性もあります。ここでは実際にCの項目についてオニールの言葉を借りながら銘柄選択時に気を付ける点について述べていきます。

EPSの増加に注目する

株を買うときは、当四半期(最新の決算が発表された四半期)のEPSが前年同期比で、大きな伸び率を示している銘柄を選ばなければならない。

ウィリアム・J・オニール 「オニールの成長株発掘法第4版」より

一口に利益と言っても営業利益、経常利益、純利益など色々ありますね。その中でオニールが注目するのは純利益を発行済み株式総数で割った数字であるEPS(一株当たり利益)です。このEPSをオニールは「投資家として最も注目すべきもの」と言っています。

なぜ純利益ではなくEPSに注目するのか?の理由として、企業をまるごと所有している訳ではなく、自分の割り当て分(保有している株数)しかもっていないからだと述べています。

言われてみると確かにそうですね。10,000株だろうが1,000,000株だろうが、100%持っていれば純利益全てがその人の利益と考えられます。ところが、部分的に企業を所有する投資家にとっては、自分に割り当てられた株に対してどのくらいの利益を得ているか、が重要になりますね。

「本物のEPS」を見極める

投資家として成功するには、臨時の収益に惑わされてはならない。例えば、あるパソコンメーカーが前四半期のEPSに不動産の売却で得た臨時収入を含めた場合、この収益は決算発表から差し引いて考えるべきである。

ウィリアム・J・オニール 「オニールの成長株発掘法第4版」より

EPSは純利益を発行済み株式数で割った数字です。

そのため、全ての利益が含まれているのですが、いわゆる特別損益などはその場限りの数字なのでその企業の真の実力を反映していない。ということを言っています。プロの投資家はそういうことはすでにお見通しです。表に出てきた数字だけを鵜呑みにしてEPSが伸びた!と喜んでいると急落することになります。

そういう意味ではEPSだけではなく、本業の利益である営業利益がEPSと同程度に確実に伸びていることを確認するのがいいと思います。

また、時にEPSは第三者割当やストックオプション等で新たに株式が発行され希薄化することによって下落します。EPSは純利益を発行株数で割っているのですから発行株数が増えれば下落するのは当然ですね。

その結果、部分的に保有する我々投資家にとっては割り当てられる利益は減ることになります。

企業が発表する決算はとにかく表面的な数字にフォーカスされがちですが、このEPSと営業利益を重視していく必要があります。

EPS判定の具体的な設定

企業のEPSは、季節性による変動の影響を排除するために、直前の四半期ではなく前年の同期四半期と比べること。

ウィリアム・J・オニール 「オニールの成長株発掘法第4版」より

成功している投資家の多くは、EPS増加率の最低目標として25%や30%を設定している。さらに成功率をあげるために、過去2四半期続けて、大幅にEPSが増加している銘柄を必ず選ぶのだ。

ウィリアム・J・オニール 「オニールの成長株発掘法第4版」より

オニールは具体的に、前年同時期の四半期利益と比べること。増加率は最低25%以上。と述べています。また成功率を上げるには2期連続で条件を達成していることが望ましいといっています。さらに、補足する内容について以下のように述べています。

大化け銘柄の分析の研究から、大きく上昇した銘柄のほとんどすべてがそれ以前の10四半期の間のいずれかの時点で、四半期EPSを加速的に伸ばしていることが分かっている。(中略)その企業のEPS増加率が以前よりも改善されていることも重要になるのだ。

ウィリアム・J・オニール 「オニールの成長株発掘法第4版」より

仮に先程の条件で2期連続で四半期利益が伸びているとしても、1期前の四半期が前年同期比40%伸びていて、今期四半期が前年同期比30%だと伸び率としてはマイナスなので好ましくない。ということを言っています。理想としては前四半期が50%で今四半期が100%伸びている。といった銘柄がいいわけです。

EPSの前四半期からの増加率が25%以上であること。それが2四半期連続である上に伸び率がプラスであること、この二つが重要です。

利益と共に売上増加が最低条件

四半期EPSが勢いを付けて上昇していても、売り上げが直近の四半期に少なくとも25%以上増加しているか、あるいは売り上げ増加率が直近3四半期で加速していることが最低条件である。

ウィリアム・J・オニール 「オニールの成長株発掘法第4版」より

仮にEPSが順調に伸びているとして、売り上げがそれに伴っていないということはどういうことでしょうか?

例えば人員整理をして人件費が減った。とか、広告宣伝費を抑えた事で販管費が下がった。と言った事が考えられます。いずれもコストが下がるので一時的に利益は上がりますが、将来の営業活動=成長にとっては不安な要素です。構造改革が進んだという事ならプラスですが、改革による混乱で営業活動がお座なりになって売上が下がっているのかもしれません。

いずれにしても売上と利益が共に伸びている事が、順調な企業成長の証といえます。その様な銘柄であれば、株価も継続的に上昇しやすいのです。

オニールはEPSと同様に前年同四半期から25%以上の上昇。もしくは3四半期連続で売上増加率がプラスになる事を条件としています。

後の条件について説明します。例えば3四半期前の売上が10だったとして、

①2四半期前:売上が12(10に対して2伸びているので増加率20%

②1四半期前:売上が15(12に対して3伸びているので増加率25.0%

③今四半期:売上が21(15に対して6伸びているので増加率40.0%

①②③になるにつれ増加率が増えています。プラスになるとはこういうことです。

さらに保険をかけるなら・・

今まで見てきてこれで十分だろうと思うんですが、オニールはさらに条件を加えています。

直近の四半期の当期純利益が最高値かそれに近い水準を記録しており、その企業が所属する業界のなかでも最上位であることを銘柄選択の条件として加えれば、成功率はさらに向上するだろう。

ウィリアム・J・オニール 「オニールの成長株発掘法第4版」より

直近の四半期の当期純利益が過去最高の利益水準であることとしてます。正に最強ですね。(^-^;

続く文章では業界の中でも最上位であることが成功率上昇につながるとしていますが、これは「L」の項目である主導銘柄かどうかにつながる話だと思いますので、そちらで詳しく書きたいと思います。

業績悪化の判断方法

このような最強の銘柄を選んだとしても、いつかは業績や株価が伸びない時期がくるのは必然です。では悪化したと判断するにはどうしたらいいんでしょうか?

企業のEPSが悪化したと判断するのは、2四半期連続で著しく増加率が減少したことを確認してからにしたい。具体的には、前回の増加率に比べて2/3以上の減少を目安にするとよい。

ウィリアム・J・オニール 「オニールの成長株発掘法第4版」より

EPSの増加率ですから、たとえEPSがプラスでもだめな場合があるということですね。例えば2期前の前年同四半期比EPS増加率が200%だったとして、

①2期前の前年同四半期比EPS増加率が200%

②1期前の前年同四半期比EPS増加率が60%(前期の200%に対して70%の下落

②今期の前年同四半期比EPS増加率が15%(前期の60%に対して75%の下落

オニール曰く、前期から2/3以上(66.7%以上)、2回連続で減ったら成長が鈍化したと判断する。ということです。

従って、EPSは毎期伸びていますが、増加率は①から②のところで70%減、②から③のところで75%減となっています。

こうなったらいよいよ撤退を考える時期だということになります。

注意点

ここまでして選んだ最強の銘柄とて、いつまでも同様の状況が続くと市場は成長を織り込んでしまう時がくるようです。

強気相場の後半では、長期にわたって上昇を続けていた多くの主導企業のなかには、EPS増加率が100%を越えているにも関わらず株価が頭打ちするものもでてくることを理解しなければならない。これには投資家もアナリストもいつもだまされるのだ。

ウィリアム・J・オニール 「オニールの成長株発掘法第4版」より

従って、市場が上昇トレンドに入ったなるべく初期段階でこれらの銘柄を見つけることが非常に重要になってきます。市場の流れに関する記事はCAN-SLIMの「M」の項目で詳しく書いていますのでそちらをご覧ください。

オニールはこういった最高の銘柄の末路について恐ろしいことを言っています。

真の主導銘柄-ほかの銘柄の2~3倍以上値上がりする株-はピークに達したあと平均で72%下落する。

ウィリアム・J・オニール 「オニールの成長株発掘法第4版」より

如何に最高の銘柄でもいつかはピークを迎え、その後ピーク値の3割近くの株価まで落ちると言っています。

投資をするときには長期的な目線ですでに成長を始めてからだいぶ上昇してしまった銘柄は避ける必要があります。そのため、新興株を選ぶほうが確実に上昇するといえますね。

まとめ

一つ目の要素Cのポイントです。

 1.EPSは「投資家として最も注目すべきもの」である
 2.特別損益はEPSから省いて考える。そのため営業利益の伸び率を同時にみる
 3.EPSは新たに株式が発行されると希薄化で下落するので注意する
 4.EPSを前年同時期の四半期利益と比べること。増加率は最低25%以上
 5.25%以上増加が2四半期連続である上に伸び率がプラスであること
 6.売上が前年同四半期から25%以上上昇。もしくは3四半期連続売上増加率がプラス
 7.直近の四半期の当期純利益が過去最高の利益水準であること
 8.EPS増加率が前期から2/3以上、2回連続で減ったら成長が鈍化したと判断
 9.長期に渡って上昇した銘柄は暴落する可能性が高くなる
10.なるべく上昇トレンドの早いタイミングで投資をする

以上となります。

銘柄を選択するうえではCの要素が最も重要だと思います。銘柄をスクリーニングされる際には上記の条件をしっかり意識しながら実施するといいと思います。

他の要素は以下よりご覧ください。

1.「CAN-SLIM」のC(Current Quarterly Earnings) -直近四半期利益-

2.「CAN-SLIM」のA(Annual Earnings Increases) -年間利益の増加-

3.「CAN-SLIM」のN(New Products,New Management,New Highs) -新製品、新経営者、新高値-

4.「CAN-SLIM」のS(Supply and Demand) -株式の需要と供給-

5.「CAN-SLIM」のL(Leader or Laggard) -主導株か停滞株か-

6.「CAN-SLIM」のI(Institutional Sponsorship) -機関投資家による保有-

7.「CAN-SLIM」のM(Market Direction) -株式市場の方向-

お薦めの本 -このブログの元となる考え方が書かれた株式投資の必勝法です-

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